【新・関西笑談】みんぱくのアンデス博士(3)国立民族学博物館教授 関雄二さん(産経新聞)

 ■村人と酒を飲み、話を聞き… 考古学は掘ればいいだけじゃない。 

 −−遺跡があるパコパンパには、毎年3カ月ほど滞在されるそうですね。どんな村なのでしょう

 関 日本から行くと1日かかります。首都のリマから飛行機で2時間。さらに車で北に9時間。人口500人の小さな村ですが、関西人みたいな気質の人たちが住んでいます。

 −−関西人?

 関 関西人は見ず知らずの人には冷淡だけど、一度仲良くなるととことんつきあうところがあるでしょう。アンデスの人も同じような感じです。

 −−村人からは何と呼ばれているのですか

 関 スペイン語でドクトル・セキ(関先生)です。

 −−何だかかっこいいですね。村人も発掘にかかわるのでしょうか

 関 はい。私たちで全部やると、腰痛めますからね。私もそろそろ年なので。彼らは農民だから体は強いし、自然を観察する力がありますから、新参者の大学院生が区別できないような土の層の違いもあっという間に覚えてくれます。調査団の洗濯や食事の世話は、村の女性たちにお願いしています。

 −−そういった作業員は先生が選ぶのですか

 関 いえ、これは村会議で決めてもらいます。調査団は大金を持って小さな村にいくので、いわば大企業のようなもの。特定の人だけにお金が行くと、貧富の差が生じて社会問題になります。

 −−どのように決まるのでしょうか

 関 素人ばかりでは困りますから、私の片腕となるような優秀な人間はほしい。なので、たとえば30人のうちの3割は経験者を選ぶから、残りの7割をみなさんで決めてくださいというんです。すると半分は貧しい家族、半分はくじびきで、みたいに決まる。村長の身内が優遇されるとか、日本の政治家みたいなことは一切ありません。

 −−素晴らしいですね

 関 思わず涙したことがあって、経験者の人が「今回このなかで一番貧しい人が雇われなかったから、僕は先生から指名された自分の権利を放棄する」というんです。何と心根の優しい人だと感動して、無理にもう1人雇いました。それくらい気持ちのいい人たちと発掘をしています。

 −−村会議というのがあるんですね

 関 ほかに水会議や電気会議もあって、私も必ず参加します。村はわき水を引いていますが、私たちが土器を洗って水が枯れたら大変だし、調査への非難もおこる。その対策のために水道会社に電話もします。電気会社とも村全体で契約しているので、コンピューターやらいろいろ使うと料金の問題がある。もう村の一員みたいなもので、今度、村長選挙に出ろっていわれています(笑)。

 −−村人の信頼があついのですね

 関 「去年の夏の村まつりでは『ミス・パコパンパ』の審査員長をさせられました。郷土料理コンテストみたいなのもあって、もうおなかいっぱい食べさせられて。ある意味、村の名士のようになっていて、何かあるとかつぎ出されるんです」

 −−じゃあきっと、相談事なんかも

 関 いろいろあります。「あいつの息子に窓を割られた」とか「子供を遠足に行かせる金がない」とか…。

 −−そんなことまで

 考古学というのは、ただ掘ればいいだけじゃない。村人の声に耳を傾けて信頼関係を築いたり、きっちり交流したりすることは大切にしています。お酒も一緒に飲みますしね。相手社会をトータルで理解しないと、異文化での調査は成功しません。ただ掘りたいだけなら、何もこんなところまでわざわざ来る必要はないんです。(聞き手 杉村奈々子)

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